脚本家より

個人的な話になりますが、令和元年7月現在、自分の人生を振り返ってみると『逆算人生』だったなぁ〜と思うわけです。『逆転人生』ではありません。そんな劇的なものではなく、あくまで『逆算』なわけです。というのも、小さな頃から集中力がなく、面倒くさがりで、行き当たりばったり。やる気がないわけではないが、やる気が起きにくいタイプの私は、成績も中の下で、将来なりたい職業はありませんでした。

しかし、父から「お前は将来、画家になれ」という夢を託され、「それじゃあ」となんとなくそれを実行するべく地元金沢の美大に入ったのです。それも二浪で。そんな私が唯一夢中になったのが美大の学生劇団でした。この劇団に入ったことが私の人生を大きく変えたと言っても過言ではありません。

話は戻りますが、私の『逆算の人生』は、大学受験の頃から始まっていたようです。就職も大学卒業式寸前ギリギリの時期にCM制作会社へ決まり、そこでは毎日のように企画を出さされました。年間100本。そのほとんどはボツになるのですが、それよりも増して、人生わずか20数年の蓄積では、アイディアなんてすぐに尽きてしまうわけです。最初は湯水のごとく湧いて出てきた企画も、ひと月も経たないうちに、枯渇してしまい、新案を考えているうちに小鳥のさえずりで打ち止めとなるのです。そんな繰り返しの中で、『逆算人生』が本格化するのです。とにかく毎日そんな感じだと寝る時間がないので流石に体が保たない。そこで、まず寝ようとなるわけです。そして早朝2時3時に起き、出勤の時間に合わせて、ここで企画をまとめなければならないギリギリの時間にまとめるのです。側から見ると、すぐに寝ちゃって大丈夫?って感じなのですが、この時の集中力たるやハンパなく、私には追いつめられた時の馬鹿力が必要なのです。

今回、一度解散した劇団が復活! この話に軽々しく乗ってしまった私ですが、これってやっぱり難しいなぁと感じております。2007年の解散はまさに満開の桜の散り際に大風が吹くような華々しいエンディングでした。今回は前回のような華々しいものはできないでしょう。ただ、一つあるとすると、人それぞれのメッセージを綴った寄せ書きのような演劇なのかなぁ。で、『遺言』という題材を選びました。人は、『死』に対して色々な想いがあると思います。怖いと思う方もいれば、不老不死が理想な方もいらっしゃるでしょう。私は、叶うことなら、死期を知りたい。できれば日時まで知ることができるなら、逆算して最高のエンディングを演出できると思うのです。そんなわけで、今現在、台本の3分の1ほどしか書けておらず、出演者の皆さんには、いつ仕上がるのか。というのが最大の関心事なのですが、その点でいうと、私の中の時計がまだ、てっぺんは超えていないのかもしれないなぁと、ふと『逆算』で思うのです。

精一杯生きる。これってとても難しいものですが、全ての人にエンディングの日はやってきます。その日のために、精一杯生きることをお勧めしたい。やる気はあるけれども、なかなかやる気を出せない私からのメッセージです。

脚本・総合演出 福島敏朗

2019年7月19日現在